私は昭和11年生まれ、伊豆の修善寺で50年以上設計の道を歩んできました。数年前、引退してしばらく仕事を休んでいましたが、昨年元箱根のお寺さんのご依頼をいただき、これをきっかけとして再開することにしました。1200年以上の歴史を誇る修禅寺のおひざ元、修善寺温泉という土地柄からか、旅館や寺社仏閣の仕事に数多く携わってきたのですが、最近では日本建築の伝統を守るこれらの建築物は特殊なものとして扱われており、修繕や建て替えを頼むところがなくて困っているというお話をよく聞きます。これも時代の流れで仕方のないことだとは思いますが、とても寂しく感じます。古き良き日本の伝統文化を守る一助になればという思いから筆を執ることにしました。少しでも未来を担う皆様のお役に立てれば幸いです。